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<ファストファッション>から<サステナブルファッション>へ
私と洋服の関係を振り返ると、社会人になったころはすでにバブルもはじけあまり贅沢をした記憶はありません。そのうちにユニクロ、Zara、GAP等のファストファッションブランドが勢いを増し、安くてもそこそこお洒落になれることが当たり前の世の中に変わっていきました。
しかしまた洋服のトレンドは変わりつつあります。「サステナブル・ファッション」。衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのことです。環境省のホームページによると、1枚の洋服が作られる全過程において排出されるCO2は25.5kg、ペットボトル約255本分の製造時と変わらない環境負荷だそうです。
そのうえ、国内の一人当たりの年間衣服消費状況については、購入数が約18枚、手放す服が約15枚、着用されない服は30枚。これはかなり現実的な数値で私もドキッとしました。1枚1枚の洋服とどうお付きあいするのか、季節の変わり目ということもありクローゼットと睨めっこです。
衣服標本家 長谷川彰良さん「半・分解展」
そんなことを考えていた折に、この展示会を訪ねる機会がありました。以前、撮影させてもらった劇作家の中西昌大さんが着用していた間伐材製の「自然に包まれ、死ぬまで着たいスーツ」。これを制作された方が長谷川彰良さんということで、とても楽しみにしていた展示会です。
会場内はヨーロッパ絵画で見かけるような美しいドレスや、スーツが華やかに展示されています。でもよく見ると、そのそばには解剖された衣裳たちが。。!長谷川さんは1800年代〜1900年代初頭のヨーロッパ衣裳を収集し、分解し、その構造を研究されている専門家です。
今回の展示には3つのテーマがありました。
「下着の手仕事」
「リメイク・お直しの歴史」
「軍服の内部構造」
テーマに沿ったミニレクチャーの時間があるので、私は特に関心の高い「リメイク・お直しの歴史」のお話を伺いました。
そこに登場したのは、1890年代のコート。なんと生地の表裏をひっくり返したうえ、左右反転にリメイクされたという逸品。それは御者のような下層階級の男性が、傷んだコートを買い替えるお金を節約するために1着を長持ちさせるための工夫だったといいます。まるで畳のようです!
長谷川さんのお話しによると、その時代は良い生地の洋服を着用できる身分はごく一部。貴重な生地を代々受け継いで着るために、ドレスはわざと「ザクザク縫い」。ほどいて次の時代にリメイクしやすいよう縫製されていたそうです。
一方、下着は細かなギャザーなど明らかに手間がかかる縫製がなされています。その理由は、下着はさすがに着回さないので一人の方が長く着れるように丈夫に破れないように。さらに、古くなれば雑巾等にリユースできるように考えて作られていたそう。
下の豪華な刺繍のドレスは、長谷川さんの言葉をお借りすると「魔改造」だそうで、なんと男性用のスーツをそのままドレスの一部に利用したものだとか。
100年以上前の、眼から鱗のリメイク術がたくさんです!これらはすべてミシン(機械)が登場する以前、手仕事がなせる技。私たちは便利さや時短、今でいうタイパと引き換えに手を動かすクリエイティビティを失っているのかもしれません。
今年は衣替えのタイミングがわからず、服と向き合う時間が長いです。一枚一枚を大切に見直す良い機会かもしれませんね。
「半・分解展」(衣服標本家・長谷川彰良さん)
10月17日(木)~29日(火)13時 開場 20時 閉場 ※最終日29日のみ15時閉場
入場料当日 web 6,000円 当日現金 7,000円会場
ギャラリー大和田
東京都渋谷区桜丘町23-21 2F (渋谷駅より徒歩6分0